敷金や礼金がかからない「ゼロゼロ物件」が魅力的に思うことはありませんか?たしかにゼロゼロ物件を選ぶことで、何かと費用がかかる初期費用を抑えることが可能なことがあります。しかし、ただほど高いものはありません。しっかりと扱わないと結果的に損をしてしまったりすることもあります。今回はゼロゼロ物件とはどのようなものなのか、カラクリやメリットデメリット、注意点までわかりやすくご紹介していきます。
ゼロゼロ物件とは敷金礼金の支払いがない物件のこと
ゼロゼロ物件とは、敷金や礼金の支払いがない賃貸物件のことです。敷金と礼金がかからないことで、引越しや一人暮らしの際の初期費用を大きく抑えることができます。しかし、自分自身にあっているのかをしっかりと判断しなければ、結果的に損をしてしまう可能性もあるため注意が必要です。
「敷金」と「礼金」とは?ゼロゼロ物件は何が0円なのかを理解しよう
さて、ゼロゼロ物件でかからないとされている、「敷金」と「礼金」とはどのようなものでしょうか。
敷金とは、関西では保証金とも言われ、家賃が払えなかった場合や、退去時の原状回復(退去する際に、入居時の状態に部屋を戻すこと)の費用の担保のために大家さんに預けるお金のことです。家賃の未払いなどがなく、原状回復の工事が必要なければ全額、原状回復費用がかかっても残金は返還されます。
礼金とは、大家さんに対して家を貸してくれたお礼として支払うお金のことです。敷金と違い、退去時に返還されることはありません。
敷金礼金ともに物件にもよるものの、1ヶ月の家賃程度が相場となっています。
そして、ここで1つ理解しなければならないのは、「大家さんの立場からすれば、敷金も礼金も払ってもらえるのであればもらったほうがいいお金」なのです。敷金がなければ仮に借りて側が家賃を滞納したまま逃亡し、所在地が特定できない場合、敷金と相殺することができません。
ゼロゼロ物件は初期費用がゼロになるわけではなく、3ヶ月程度はかかる
敷金・礼金がかからないゼロゼロ物件は初期費用を安く抑えることは可能なものの、「お金がかからず入居できる」わけではありません。仲介手数料や前家賃、火災保険料、鍵交換費とといった他の初期費用はかかります。あくまで目安ですが、ゼロゼロ物件家賃の3ヶ月分は必要と言えます。
1ヶ月の家賃 | ゼロゼロ物件の不動産初期費用目安 |
40,000円 | 120,000円 |
45,000円 | 135,000円 |
50,000円 | 150,000円 |
55,000円 | 165,000円 |
60,000円 | 180,000円 |
65,000円 | 195,000円 |
70,000円 | 210,000円 |
75,000円 | 225,000円 |
80,000円 | 240,000円 |
「ゼロゼロ物件は危険」というイメージについて
もしかすると「ゼロゼロ物件は危険」というイメージを持っている人もいるかもしれません。ある時一部の業者が、「敷金ゼロ、礼金ゼロ、仲介手数料ゼロ」などを謳い文句にして、低所得者層を入居させ、家賃の支払いが1日でも遅れた場合無断で鍵を交換、違約金や施設利用料などを強要した事例があり、一時ニュースなどで話題となりました。このことにより「ゼロゼロ物件は危険」というイメージが広がってしまった背景があります。また、一部悪質業者がいたり、自身の知識不足によりトラブルとなる可能性も否定できません。
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しかし、しっかりと契約書などを理解すれば、危険なものではありません。ただし、ゼロゼロ物件を契約する場合トラブルなどを避けるために、しっかりと信頼できる不動産業者を見つけたほうがいいでしょう。
ゼロゼロ物件が生まれた原因
上記のようにゼロゼロ物件となる敷金と礼金は、大家さんの立場からすれば、両方とももらえるのであればもらっておきたいお金のはずです。敷金がゼロだとして、部屋を貸していた人が家賃を支払わなかったり、退去時に原状回復をせずに逃げられてしまっては大きな損失です。礼金は一時的な収入になります。さて、それなのになぜ敷金礼金をゼロにしているのでしょうか。
敷金礼金を0円にしてでも家を貸したい
大家さんの立場からすれば「空室」というのは1つのリスクです。せっかく所有している家賃6万円の部屋があっても、1年間誰も住んでくれなければ、それだけで120万(6万×12ヶ月)が入ってこないことになります。
単純に「誰も住んでいない状態が事実上の損失」になるのです。また、投資用不動産としてローンを組んで部屋を購入して貸し出している大家さんからすれば、ローンの返済にも影響しかねません。
誰も住んでいない状態は嫌だから、敷金・礼金をただにしてでも、住人に住んでもらい、という大家さんも多いのです。
人口の減少などにより大家さんの競争も激化
近年の日本では人口が減少しており、空き家の数も増加しています。そのため、「住民が住んでもらいたいが貸し手が見つからない」大家さんも多くいます。
さらに現代は、スマートフォンやパソコンで簡単にお部屋を検索、比較することができるようになりました。便利になった分、家を借りたい人を探す競争も激しくなったのです。これにより、敷金礼金を無くしても、住む人を探したい大家さんが増加し、結果としてゼロゼロ物件は増加傾向にあるのです。
また、一定期間の家賃を無料とするフリーレント物件も近年増加傾向にあります。
礼金の文化もなくなってきている
礼金は元々「家を貸してくれた大家さんにお礼として支払うお金」でした。しかし現在は上記のように、むしろ「大家さんがお礼を払っても住民を探したい」時代です。徐々に礼金の文化もなくなっていると考えていいでしょう。
ゼロゼロ物件となるケースや注意点
それは、ゼロゼロ物件となるのはどのようなケースなのでしょうか。それぞれ見ていきましょう。
ゼロゼロ物件のケース①大家さんが空室の状況を避けたい
ゼロゼロ物件のケースとして「純粋に大家さんが空室の状態を避けたい」ことは挙げられます。物件などの条件に何も問題がなくても、大家さんが空き家を避ける方が優先するケースです。
ただ、「超人気物件の場合、敷金や礼金がかかってもすぐに住人は見つかる」のです。何らかの事情がある可能性は考えておく必要があるでしょう。なお、「住宅設備には問題がないものの、物件の住所やリッチに問題があり借りたい人がこない」場合で、自分がその物件の場所に都合がよければ、お得なケースと言えるでしょう。
ゼロゼロ物件のケース②事実上の敷金・礼金の分割払いとなっているケース
敷金や礼金が最初はかからなくても、その分を毎月の家賃で充当するケースもあります。さらに同じ物件でも契約時に、「敷金礼金有り」と「ゼロゼロ物件(敷金解約なし)」で選べることができます。
この2つのケース場合、ゼロゼロ契約の場合では「敷金礼金分を月々の家賃で回収するために、毎月の家賃が高く設定されている」ことが多いです。
さらに基本的には「短期解約違約金」が設定されています。毎月の家賃で敷金・礼金を充当している分、仮に途中で解約された場合回収できないため、その分の1ヶ月分を退去時に支払うことになるので一般的です。(これは厳密にはグレーゾーンなため、違約金として書かれていることがほとんどです。)
敷金として支払ってはおらず、毎月の家賃で支払う場合、退去時の敷金の返還などはありません。さらに敷金の性質上、「退去時の費用に関しては必ず確認するようにしてください。
ゼロゼロ物件のケース③他の費用が高いような物件に注意
敷金・礼金は0円でも、エアコンや部屋のクリーニング代、部屋の消毒費などが初期費用として必要な物件もあります。悪質な場合、「敷金・礼金がかからないことでお徳だと思わせるものの、実際は他の物件とほとんど差がない」物件すらあるのです。
もちろん初期費用がかからないということはありません。見積もりの段階で、しっかりとそれぞれの費用を確認し、何のためのお金かかを不動産業者に確認するよういするといいでしょう。
ゼロゼロ物件のメリット・デメリット
さてここまでゼロゼロ物件とケースや理由などをご紹介していきました。それでは、ゼロゼロ物件のメリットやデメリットを見ていきましょう。
ゼロゼロ物件のメリット
ゼロゼロ物件はのメリットはなんといっても初期費用を安くすることができることです。他に必要な家電や家具などにお金をかけることができます。初期費用がかからない分、年間単位で見て同じ予算でも家賃をあげることも可能です。
なお、この初期費用がかからないというメリットがないのであれば、むしろゼロゼロ物件を選ぶ必要はないでしょう。
ゼロゼロ物件のデメリットやケース
それではゼロゼロ物件のデメリットについてもいくつか解説していきます。なお、全ての物件でこれが当てはまるわけではなく、「あくまで一例」として抑えておきましょう。
何らかの事情で人気がない物件の可能性
上記のように「敷金・礼金」をもらわないことは、大家さん側からすれば、住みたい人を見つけやすくすること以外はプラスはありません。「あくまでその物件にはなんらかの事情がある」ことは把握しておく必要があるでしょう。
結果的に支払い総額が高い場合もある
敷金・礼金がかからなくとも、月々の家賃によって充当しているような物件の場合、結果的に支払い総額が多くなることがあります。携帯電話の割賦払いのようなケースです。
ここにさらに原状回復の費用が必要となる場合、さらに費用がかかることになります。
月々の家賃を2年払った場合 | 敷金・礼金 | 2年間の家賃+敷金礼金 |
60000円×24ヶ月=1,440,000円 | 120,000円(1:1) | 1,560,000円 |
66000円×24カ月=1,584,000円 | 0円(ゼロゼロ分件) | 1,584,000円 |
短期解約違約金が設定されることも多い
ゼロゼロ物件では「短期解約違約金」が設定されることも多いです。ひらたくいうと「月々の支払いを2年間継続する変わりに初期費用を安くする」という契約になっているのです。なお基本時にはいかなる理由があろうとも、違約金は発生すると考えていいでしょう。その契約期間においては住む前提と考えておきましょう。
同じ物件の他の入居者の質が低い可能性がある
ゼロゼロ物件では初期費用が安く抑えられますが、「ゼロゼロ物件しか入居できない」人が集まっている可能性があります。これはゼロゼロ物件に限ったわけではありませんが、家賃や初期費用が相場に比べて安い物件のデメリットが、ゼロゼロ物件にも当てはまる場合がある言えるでしょう。
その他の費用がかかることも多い
ゼロゼロ物件では、敷金や礼金がかからない代わりに、家賃保証会社への加入など他の費用がかかることが多いです。しっかりとそれぞれの費用がどのようなものなのかを確認するようにしましょう。
退去時にお金がかかるケースもある
担保である敷金がない代わりに、原状回復やクリーニング台などがあとでかかる請求されるケースもあります。いわば先にとるか、後にとるかの違いです。
なお、退去する際にはまた新しく様々な費用がかかります。初めての一人暮らしの場合最初の入居費用だけですが、次の引越しでは退去費用と入居費用が同時にかかりますので、先に支払ったほうが後で楽になるほか、トラブルが防げる可能性もあります。
なお、ゼロゼロ物件の退去時はトラブルに発展しやすいので、しっかりと確認する必要があるでしょう。
ゼロゼロ物件を選ぶ際には、しっかりと不動産屋に相談しよう
ここまで、敷金・礼金がかからないゼロゼロ物件について見てきました。ゼロゼロ物件は、初期費用を抑えることができる変わりに「敷金・礼金がゼロであるなんらかの理由がある」のです。
また、何らかのトラブルに発展する可能性もゼロではないため、ゼロゼロ物件を契約する場合、しっかりと相談できる不動産業者に相談したほうがいいでしょう。